歯周病治療
歯周病とは
歯周病とは歯周組織と呼ばれる、歯の周りにある歯肉(歯ぐき)や歯槽骨(歯を支える顎の骨)の病気です。
お口の中にはたくさんの細菌がいます。この細菌の塊、いわゆるバイオフィルムが歯垢(プラーク)や歯石となり歯肉・歯周ポケットに感染を起こし、歯肉が腫れたり出血したり、最終的には歯槽骨が溶けて支えがなくなるため歯が抜けてしまう病気です。
また、歯周病の菌がお口の中の血管を介して体内に入ると全身の健康を脅かすことが近年の研究で明らかになってきています。
歯周病のケアをしている人と比べて、ケアをしていない人の脳梗塞のリスクは2.8倍、妊産婦における低体重児出産のリスクは7倍で、たばこやアルコール・高齢出産よりはるかに高くなります。
関節炎(リウマチ)や腎炎・狭心症や心筋梗塞の発症にもつながり、糖尿病においては、歯周病菌が血糖値を下げるインスリンの働きを阻害するため糖尿病が悪化しやすくなり、高血糖の状態は炎症のコントロールを困難にするため歯周病も治りにくいという相互関係があり、歯周病は全身疾患とも密接に関わっています。
ついてしまった歯石は歯磨きでは除去できないため、歯科医院で除去する治療が必要となります。早い段階で治療をすれば、健康な状態に早く戻ることができます。
歯ブラシ・デンタルフロスや歯間ブラシなども使い、セルフケアもしっかりすることが治癒への近道となります。
早期発見・早期治療のメリット
歯周病は自覚症状が少ないため、重症になってはじめて治療が必要だと気付く方がほとんどです。
近年では歯周病の治療は目覚ましい進歩をとげ、骨の喪失を止めたうえで、失った骨を再生させることもできるようになってきました。しかしそれでも完全に元どおりにすることはほぼ不可能です。そしてすべての歯を救えるわけではありませんし、重症になるほど様々な手術や処置が必要になります。歯周病は早期発見、早期治療が重要です。
成人の約80%が罹患しているといわれる歯周病。高齢の方だけの病気ではありません。
お口の中の病気は虫歯だけにとらわれがちですが、歯周病も歯を失う原因の一つ、そして生活習慣病の一つでもあります。普段から定期的に歯科医院で検診やメンテナンスを受けて、しっかりケアしていきましょう。
歯周病治療の流れ
1.レントゲン撮影・歯周ポケット検査・口腔内写真撮影
レントゲンを撮影し、歯槽骨の高さや歯の形態などをチェックします。
プローブという器具を用いて、歯周ポケットの深さ、出血の有無、動揺度(歯の揺れ具合)などの検査を行い、お口のカラー写真を撮影します。
生活スタイルなどもお伺いしながら、ひとりひとりに合った治療計画をご提案し、丁寧な説明を行います。
2.プラークや歯石を除去(スケーリング)
歯周病の原因となるプラークや歯石を、スケーラーという器具を用いて除去していきます。
また、歯科衛生士による歯みがき指導で歯ブラシやデンタルフロス・歯間ブラシなどセルフケアの仕方や、食生活指導を行います。
約1週間後に検査を行い、改善を確認します。軽度の歯周炎・歯肉炎の方はここまでで治療が完了します。
3.歯と歯肉の中に溜まっている歯石やプラークの除去
歯周炎が中等度になってくると、歯肉の中や歯の根面にも歯石がついてきます。
セルフケアだけでは取り除けないため、キュレットスケーラーという器具などを用いて、歯根についた歯石を除去し根面を滑沢にするルートプレーニングと、そこに触れて炎症が起きている歯肉(不良肉芽)を除去していくデブライドメントという処置を行います。
歯周ポケットの深い部分にアプローチしていくため必要に応じて麻酔をして治療をします。
4.歯周外科治療
歯周炎が重度の場合、歯石が深くまであるため取りきれず、治りの良くないことがあります。このような場合は、外科的な治療が必要になります。
麻酔をしてから歯肉を開いて、プラークや歯石および不良肉芽を確実に取り除き、深い歯周ポケットを浅くして再発しにくくします。歯を少しでも多く残すための最後の切り札が歯周外科治療です。
5.メンテナンス
お口の中の細菌を完全になくすことは不可能です。そのためいったん歯周治療が終了しても歯周病は再発しやすいため、治療完了後の定期的なセルフケアやメンテナンスが重要な予防対策になってきます。
歯周病のコントロールは、細菌と力のコントロールが重要です。
患者様自身によるセルフケアだけでなく、定期的に歯科医師や歯科衛生士による検診を受け、歯のメンテナンスをしましょう。
また、普段から食いしばりや就寝時に歯ぎしりをする方は、咬む力により歯周病の進行が早まる可能性があるため、ナイトガード(マウスピース)で力のコントロールをすると良いでしょう。